2009年7月16日木曜日

Woman

今日、診療の終わり際に飛び込みで来院された患者さん。

彼女は、松山からい1時間も離れた場所に住んでいて、中々来れない、そして、今、私の病院のすぐ目の前にあるがんセンターに通院している為、ついで感覚で来院されたよう。


処置自体はなんら簡単なものだったのだが、これがまぁ、よく喋る喋る!!!

始めは何の話をしているのかよく分からなかったのだが、だんだんと真相に迫って行き、かなり貴重なお話しをしてくれていたのだった。


4年ほど前から、自分で右の胸部を触ったところ軽い痛みがあって、病院に行ったが、特に問題はないとのことだった。それから、2年間軽い痛みは変わらず検診に行くも、問題なかったとのこと。
2年前に、会社の健康診断にて、自分を含め5人の乳がん患者が発見された。女性の10人に1人が乳がんと言われている今の世の中で、その会社の中だけで5人も見つかったのはかなりの驚きだ!!


彼女は2年前から検診で問題ないと言われていたのに・・・それを新しい病院の主治医に相談したところ、2年前はまだしも、去年にはこの影が無かったはずがない。その写真を持ってきて見せて下さいと言われ、持って行くと、ボヤけていて、コレじゃ分からなくて当然だと。でも、未だにそんな病院がある事にそのドクターも、ビックリされていたらしい。


彼女は精密検査の毎日で、2年前に腫瘍と関連リンパ節を切除した。
それから、毎月このがんセンターへ検診に来ている。

同じ女性として、彼女は熱く語ってくれた。
乳がんは本当に進行が早い事、そして、良い病院に行かなくては意味がないと言う事。


『良い病院』を聞いてメモを取った。
案外少ないものだったことに、ビックリだった。
自分が選んだ病院で、自分の一生がほぼ決まると。
よくよく、見極めなさいと。


そして、帰りが遅くなったにもかかわらず、彼女は院長に『この先生と話しがあるの。』と私を引きとめ、『見てくれる?』と、おもむろにTシャツをめくって手術跡を見せてくれた。
乳がんの患者さんのそれを見たのは初めてだった。両胸部上方に1箇所ずつ、両脇前方部に1箇所ずつ、計4箇所の傷跡があった。
それを見て、何も言わなくても、その日から今日までの2年間を想像できる。
がん患者さんの生き方、その患者さんの背景の移り変わり、研修医時代全てを注ぎ込んで見てきたつもりだ。


彼女は必死に、乳がんの発症機序から、4つもあるがんの段階、発症したがんの体中への広がり方からどんどん説明してくれた。


『女性の病気』。。。



そして、彼女は私に訴えかけた。
一刻も早く検査をすること、病気でなければそれで安心じゃないかと。
乳がんは早く見つけたもの勝ちなんだと。
私のような人をこれ以上増やしたくないと。



彼女の目は本物だった。



つい最近まで『余命1ヶ月の花嫁』が大ブレイクしていた。私も、大学の恩師、金銅先生がわざわざ長野県から『コレ見て感想教えて!』と送ってきてくれたほどだった。金銅先生が薦めるものだから、何らかの意味があるものなんだろう。

それを見た時は、それで感じた事たくさんあったし、自分なりに『生きる』ことを考えてたつもりだった。


でも、実際には未だに検査にも行ってない。


今日の彼女の目を見て、本気で一度検診に行こうと思った。


彼女は、私にこう言うてくれた。
『私なんかでよければ、いつでも、何処でもお話しをしに行きますよ!この傷跡をみんなに見て欲しい。どうか、アナタの友達、知り合いみんなに伝えて下さい。女性であるならば、早く検診に行って下さいと。』



彼女との出逢いも縁なんだ。


もしかしたら、治療後そのまま帰っていたのかもしれない。
この病院の、多くいる患者さんの一人だったのかもしれない。
もしかしたら、道端ですれ違ってただけかもしれない。
もしかしたら、お互い知らないままだったのかもしれない。




私は本当に幸せ者です。



ありがとうございました。

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